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千利休宗易

07.利休百首 

❙はじめに ~ 利休百首 ~

前項で解説した千利休の茶道の精神を現した「四規七則」ですが第7/10項では千利休が茶道を修練する上で茶道の心得を和歌の形で100首にまとめた「利休百首(利休道歌)」をご紹介します。

「四規七則」と同様に茶道では大切な心得を説いていますが100首と多くすべてを覚えるのは大変ですが茶道の修練をする前には必ず一度はすべてに目を通し修練に備えることが大事ですのでなるべく短い解説にてご紹介したいと思います。

❙利休百首 ~ 利休百首とは? ~

『利休百首』または『利休道歌』という。

『利休百首(利休道歌)』とは『千利休』が「茶道の精神」や「作法の心得」、を茶道修練者にわかりやすく和歌の形で一句三十一文字にまとめたものをいいます。

『利休百首(利休道歌)』のすべての首が千利休の作であるとは断言できる資料は無く、武野紹鴎による『紹鴎茶湯百首』や片桐石州による『石州三百箇条』、『遠州茶湯百首』などその他にも数多く存在しており、現在の『利休百首(利休道歌)』にまとめたのは『裏千家十一代/玄々斎精中宗室(1810-1877)』とされています。

 

『裏千家十一代/玄々斎精中宗室(1810-1877)』は裏千家/今日庵にある茶室『咄々斎』の茶道口にあたる襖に点前作法の種別、道具の扱いなどを自筆で書き詰めており、『利休居士教諭百首歌』と題してこの百首を記しており、終わりには

『以心伝心教外別伝不立文字 拍は鳴る敲は響く鉦の躰』

と自作の句を加え『於抛筌斎 不忘宗室』と署名を加えている。

なおこの襖は『法護普須磨』と称し今日に至る。

※現在は後世に利休作とされる『二首』が判明したため一般的には百二首が『利休百首(利休道歌)』とされています。

❙利休百首 ~ 利休百首 ~

一、

その道に入らんと思う心こそ我身ながらの師匠なりけれ

何事でもその道に入りそれを学ぶにはまず志を立てねばならない。自発的に習ってみようという気持ちがあれば、その人自身の心の中にもうすでに立派な師匠ができている。

二、

ならひつつ見てこそ習へ習はずに よしあしいふは愚かなりけり

批評するなら先ずその対象になるものに自ら入り込まねばならない。口先だけの批評では人は納得しない。

三、

こころざし深き人にはいくたびも あはれみ深く奥ぞ教ふる

熱心な弟子には親切な師匠であるべき。実の子に教えるが如く憐れみ深く細々と教えなさい。

四、

はぢを捨て人に物問ひ習ふべし 是ぞ上手の基なりける

知らない事を恥と思わず、師匠や先輩に質問しなさい。一度のチャンスを逃し、知らないままなのは大きな損失となり、反対に一時の恥ずかしさを我慢すれば一生の得となる。

五、

上手には好きと器用と功積むと この三つそろふ人ぞ能くしる

名人上手になる為には、「好きであること」、「器用であること」、最後に「たゆまぬ研さん (修行)」である。

六、

点前には弱みをすててただ強く されど風俗いやしきを去れ

点前は力が弱すぎてもいけないし、力が入りすぎてもぎこちない。

「気持ちは弱く、動作は強く」と考え、弱くも強くもない中庸を得た点前が良い。

七、

点前には強みばかりを思ふなよ 強きは弱く軽く重かれ

軽い道具を扱う時は重い道具を持つ気持ちで、重い道具を扱う時は軽い道具を持つ気持ちで。

八、

何にても道具扱ふたびごとに 取る手は軽く置く手重かれり

道具を置いてその手を離す時はすぐに引くのではなく、ゆっくりと離しなさい。

「置く手重かれ」とはこのことを指しています。

九、

点前こそ薄茶にあれと聞くものを 麁相になせし人はあやまり

点前の巧拙は運びの平点前の薄茶で最もよく現れる。薄茶の点前がしっかり出来ないのでは、濃茶も練られないはず。何事も基本がもっとも大切です。

十、

濃茶には手前を捨てて一筋に 服の加減と息をもらすな

濃茶は服加減が第一である。加減良く濃茶を練る事に専念し、点前の上手下手を重要視してはいけない。腹に力を入れ呼吸を整えることを心得なさい。

十一、

濃茶には湯加減あつく服は尚ほ 泡なきやうにかたまりもなく

濃茶は湯加減が大切。湯は熱いほうがよく、茶碗は茶を入れる前によく拭き、初めに十分練りなさい。泡やダマがある内は練られた茶と湯がよく溶け合っていないのです。

十二、

とにかくに服の加減を覚ゆるは 濃茶たびたび点てて能く知れ

濃茶を加減良く練るには何度も繰り返し練習し経験を積むこと必要があります。

​十三、

よそにては茶を汲みて後茶杓にて 茶碗のふちを心してうて

茶杓で茶碗の縁を打つ時に限らず、茶筅通しや茶碗を拭く時もよくよく十分注意して扱いなさい

十四、

中継は胴を横手にかきて取れ 茶杓は直におくものぞかし

中継(中次)は蓋が深いので棗のように蓋の上から持てないので、胴の横に手をかけて扱い、蓋上は平面のため、茶杓はまっすぐに置きなさい。

十五、

棗には蓋半月に手をかけて 茶杓を円く置くとこそしれ

軽い道具を扱う時は重い道具を持つ気持ちで、重い道具を扱う時は軽い道具を持つ気持ちで。

十六、

薄茶入蒔絵彫物文字あらば 順逆覚え扱ふと知れ

薄茶入で蒔絵、彫物、文字などがある時は棗の表裏や蓋と胴の合口をよく見定めるように注意すること。

十七、

肩衝は中次とまた同じこと 底に指をばかけぬとぞ知れ

肩衝を持って清めの同拭きする時は中次を持つ時のように、胴の横から持ち、底に指をかけないように。

十八、

文琳や茄子丸壺大海は 底に指をばかけてこそ持て

重い水指などを持ち上げる時は手軽に持ち、置いた手を離す時は恋人に別れを告げるように。

十九、

大海をあしらふ時は大指を 肩にかけるぞ習ひなりける

大海茶入の扱いは「平棗扱い」にするが、その時に左手の親指を他の指からはなし茶入の肩にかけて扱う。

二十、

口ひろき茶入れの茶をば汲むといふ 狭き口をばすくふとぞいふ

大海、鮟鱇などの口の広い茶入からは汲む、その他の茶入の茶はすくうという気持ちで。

二十一、

筒茶碗深き底よりふき上り 重ねて内へ手をやらぬもの

指や手先が茶碗の内部に触れて汚れてしまわないように、筒茶碗を拭くときは先ず底を拭き、その後に縁を拭きなさい。

二十二、

乾きたる茶巾使はば湯はすこし こぼし残してあしらふぞよき

茶巾の湿りが少ないときには茶筅通しの湯を捨てるときに、底に少し残しておくというように、臨機応変で点前をしましょうという心得。

二十三、

炭置くはたとへ習ひにそむくとも 湯のよくたぎる炭は炭なり