
茶道入門
03.茶道の季節
❙はじめに ~ 茶道の季節 ~
「茶道入門」では茶道に初めて触れる皆様が茶道の基本を学び、心を込めたおもてなしの精神を体験できるよう、茶道の基礎を全10項目にわたって、わかりやすく解説してご紹介しています。
「茶道の季節」では、四季折々の自然の移ろいが茶の湯にもたらす美しさと意味を探求します。茶道においては、季節は非常に重要な要素であり、「春夏秋冬」の季節感を反映した茶道具の選定や、点前、茶席の趣向に至るまで、自然と共にある茶の湯は、参加する人々に静寂と和の心を育むひとときを提供します。
本ページでは、茶道における季節の役割とその魅力を紐解きご紹介していきます。
それでは「茶道の季節」について詳しく見ていきましょう。
❙茶道の季節 ~ 季節を楽しむ ~
茶道では、季節が非常に重要な要素とされ、各季節に合わせて使用する茶道具や点前が変わることで、その季節ごとの趣向を楽しむことができます。また、茶室において季節感を味わうため、1年を「炉の時期」(11月~4月)と「風炉の時期」(5月~10月)の2つに分け、それぞれの時期にふさわしい趣を演出しています。
❙ 炉 ❙
「炉」の時期は冬の寒い時期にあたるため、客人の体感は当然のことながら視覚からも暖かくなるように席中の床に設けた「炉」に釜を懸け、客人に対し釜を近づけることで「炭(炭火)」を見せます。
❙ 風 炉 ❙
「風炉」の時期は暑い時期にあたるため、それまでの「炉」を塞ぎ風炉(釜)を用いることで客人に対して「炭(炭火)」を見せず体感からも視覚からも暑さを和らげます。
❙茶道の季節 ~ 炉の季節(11月-4月) ~
茶道において、抹茶の新茶がきる十一月は一年の中でもっとも大切な時期とされ『茶人のお正月』と呼ばれています。毎年十一月のはじめには『炉開き』また『口切』という行事が行われ、この日より「風炉の時期(5月~10月)」まで用いた「風炉」をしまい席中に設けた「炉」に掛けた釜を用い湯を沸かします。
当然のことながら点前も変わり、道具においても「釜」は風炉用より大きい釜を使い、香合は主に陶器を用い、香は煉香を使うなど季節を感じる変更がおこなわれます。
❙ 炉 ❙
広義でいう「炉」とは火を燃やし加熱や溶解、焼却などをする設備や香などを焚く器のことで暖炉や焼却炉、また古民家などにみられる「囲炉裏」もその一つです。茶道においては茶室内の一部の床を「一尺四寸(約42.5cm)」四方、深さ「一尺五寸(約45cm)」で切り出し、その中に「炉壇」を落とし入れ「灰」「五徳」を入れ「炭」を焚いて使用します。
その昔、わび茶を提唱した『[茶祖]村田珠光(1423年-1502年)』が初めて四畳半に「炉」を切り、その後『[茶人]武野紹鷗(1502年-1555年)』、『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)(1522年-1591年)』が『炉』の点前を定め、それまで『炉』の大きさが不確定であったが大きさも「一尺四寸(約42.5cm)」に定めたという。また床下に「炉」のスペースが無く「炉」がきれない場合は、「置炉」を用います。
❙ 炉 壇 ❙
「炉壇」とは茶室内に切られた『炉』の中に落とし入れ用いる「炭櫃」のことです。「炉壇」には「灰」や「五徳」を入れ、その上に釜を据えて使用します。
もともとは木製の箱の壁面を土で塗った塗炉の「炭櫃」が用いられていたが鉄製、陶器また火に強い銅製のものも今日では広く使われています。
❙ 炉 縁 ❙
「炉縁」とは、炉壇の上にかける「木の枠」のことで、寸法は「一尺四寸(42.4cm)」角、深さ(高さ)「二寸二分(6.7cm)」と定められており、素材は大きく分けて「木地」と「塗」の二つに大別されます。
「木地」は一般的に小間席に用いられ、「桐」「杉」「松」「梅」「桑」「桜」「柿」さらには「鉄刀木」「花梨」などの唐木から社寺などの古材まで今日ではさまざまな木材が用いられています。昔は『炉縁』は使用後に水で洗っていたので水に強い『沢栗』が用いられていたという。
「塗」は一般的に広間席に用いられ、「真塗」「溜塗」「掻合塗」「春慶塗」「青漆」などさまざまな技法が用いられていますが正式には「桧材真塗」とされています。また鮮やかな蒔絵技法が施されたものがあり、茶席の「趣向」に応じて使い分けられています。
❙ 大 炉 ❙
「大炉」とは極寒の二月に限り用いられる『炉』の一つで通常の「炉」より一回り大きく切られています。『大炉』の寸法については『千家三代/咄々斎元伯宗旦(1578年-1658年)』が陰陽五行説に則った「曲尺割法」を用いて四方「一尺八寸(68.2cm)」と定めたとされています。六畳間の茶室に「逆勝手」に配置され、四方「一尺八寸(68.2cm)」に切るのが約束となっており『大炉』内は向かって右手前寄りに「五徳」を置き「雪輪瓦」を立てて灰仕切りを施します。
炉壇は聚楽土に墨を混ぜた鼠土で灰色に仕上げ、「炉縁」は「北山杉木地丸太」を用います。
このように、茶道における「炉」は、茶会の温かみと季節感を演出するために、各時代の茶人たちによって工夫と伝統が重ねられ、今日の茶道の空間美に欠かせない存在となっています。
❙茶道の季節 ~ 風炉の季節(5月-10月) ~
毎年五月になると、それまで「炉の季節(11月~4月)」に開いていた「炉」を畳で塞ぎ、「風炉」を用いて湯を沸かします。
『[茶祖]村田珠光(1423年-1502年)』が初めて四畳半に『炉』を切り、その後『[茶人]武野紹鷗(1502年-1555年)』、『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)(1522年-1591年)』が『炉』の点前を定めるまでは四季を問わずすべての時季において「風炉」が用いられていました。
「風炉」の時季には、点前も「炉」の時季とは異なり、道具においても季節を感じさせる工夫がなされています。「釜」は小振りの風炉用を使い、香合は主に塗物、木地などの素材が選ばれ、香は香木を焚くなど清涼感を感じる演出がおこなわれます。
「風炉」の起源は、鎌倉時代(1185年-1333年)の初期に臨済宗の僧『南浦紹明(1235年-1309年)』が、仏具である「台子」などと共に中国から持ち帰ったと伝えられています。この伝来により、日本の茶の湯文化はさらに深みを増し、今日に至るまで受け継がれています。
また今日においてはマンションや公営施設など火気の使用が制限されていることから、電気で湯を沸かす「電熱式」の「風炉」なども普及しています。
このように、時代に合わせた工夫がされながらも、日本の伝統文化としての風炉の風情は守られています。
❙茶道の季節 ~ 炉と風炉の違い ~
前項でも述べたように茶道において「季節」というのは非常に重要な要素であり、また非常に楽しめる要素の一つとされています。
「炉の季節(11月~4月)」、「風炉の季節時期(5月~10月)」ともにその季節を感じるために道具の素材を替え、その道具に合わせた「点前」も変更し、さらに招いた客人の視覚からもその季節を楽しんでもらう工夫をしています。
ここでは「炉の季節(11月~4月)」、「風炉の季節(5月~10月)」においての「違い」の一例をご紹介いたします。
注) 一例であり流派などにより差異が生じるため下の限りではありません。必ずご自身の流派の先生方へご確認ください
❙炉の時期❙
[時 期] 11月―4月
[ 釜 ] 炉釜
[竹蓋置] 上節
[香 合] 主に陶器
[ 香 ] 練香
❙風炉の時期❙
[時 期] 5月―10月
[ 釜 ] 風炉釜(切合風炉/朝鮮風炉etc)
[竹蓋置] 下上節
[香 合] 塗物/木地
[ 香 ] 香木
季節を感じさせるこれらの道具の使い分けは、茶道の奥深さを体感できる要素の一つです。茶の湯の場において、季節の移ろいを五感で楽しみながら、心静かに和の美意識を味わうことができます。